アラサー独身男子の日々

株の話題、交通ネタが多めになると思います。イラストはのをか様(Twittter@nowoka_)に描いていただきました。

高配当(高分配)を謳う投資信託には注意! 毎月分配型投信信託の危険性について

コミケで個人投資家と話をして、割と毎月分配の投信を買っている人がいた

先日のコミックマーケット98では様々な個人投資家の方々とお話をさせていただきました。

その中で「証券会社の窓口で購入した投資信託で損していて上手くいってない」というような話を何人かから聞きました。

投資経験が豊富な人からすれば、何をいまさらという話なのですが、今でもそのような「買ってはいけない投資信託」を購入する人が多いようなので、私からも改めて何が問題なのか解説したいと思います。

※これは全く関係のない多摩センターのイルミネーション

窓口販売の営業は何を目的に投資信託を売るのかを考えよう

証券会社を大きく2つに分けると、窓販主体の証券会社とネット主体の証券会社に分けることができます。

日本で窓販主体の証券会社として有名なのは「野村証券」「大和証券」と言った独立系の証券会社でしょうか。その他にも、銀行が別部門として設立している証券部門などがあったりします。

一方でネット証券と言えばSBI証券や楽天証券などが有名です。

何故、どちらも証券会社という括りでは一緒なのにも関わらず、まったく資本関係の違う2つの証券会社群が並立しているのでしょうか。

 

実は、野村證券も一時期ネット証券に力を入れていたこともあり、一時は業界最安値となっていたこともあります(ジョインベスト証券)。しかし失敗して今では手数料を割高にして現在では窓販メインの業態に回帰しています。

その理由はいつくも挙げられるとは思うのですが、間違いなく言えるのは窓販とネット販売では「業態が全くちがう」ということです。

窓販証券の場合、メインとなる顧客層は残念ながら「積極的に投資をするつもりは無いが、積極的に営業を掛けらて始めた人」「ネットに馴染みの無い中高年で資産形成をしたい人」「漠然と資産形成したいが、方法が分からず有名な証券会社に頼った人」などがほとんどを占める状況です。

一方で、ネット証券で口座開設をしている人は、口座開設が簡単だと言っても自分から口座開設のために必要事項を入力、書類などを集めています。また、ネット証券の場合には基本的に証券会社の人たちから個別のアドバイスを受けることは出来ません。

ですから「投資をやろう」というそれなりの強い意志のある人が集まっています。

この2つの種類の投資家はどちらも同じように投資を行ってはいますが、投資に対しての意気込みが全く違います。

あまりよくない言い方ですが、窓販証券を利用している顧客は「なんとなく投資をしていれば資産形成ができる」と考えている人が多く、一方でネット証券を利用している人は「自分で考えて投資をしないと資産形成できない」と考えている人が多いと思っています。

ですから、利益の取り方も違います。株や投資信託、実はずっと保有していると証券会社からしたら全く利益になりません。利益を上げるためには売買をした際の手数料が基本的な収入源になります。窓販証券はネット証券よりも人件費が掛かってしまうので、短期間に多くの売買をしてもらって多くの利益を得ようとします。その結果、営業のいいなりとなった個人投資家は仮に利益が出ていたとしても、それを圧倒的に上回る手数料を知らず知らずのうちに払わされていて、手数料も含めた最終損益はマイナスになったりします。

私もほんの少し、窓販証券で取引をしているのですが、たびたび営業の方から電話がかかってきます。開口一番、言われるのは「まだ株取引されてますか?」という文句です。

それくらい、窓販証券は個人投資家を食いつぶして利益を出しているのです(もっとも、着実に資産を増やしている私からすれば、ずっと市場に残っているのが当たり前です)。

一方でネット証券はもともと人件費が安いので、窓販証券ほど手数料を必要としません。

手数料を稼ぐために、1人あたりの手数料を増やすのではなく、より多くの顧客を集める方向にインセンティブが働きます。結果的に今では国内個別株についてはほぼ手数料無料で取引が出来るレベルまで手数料の低廉化が進み、少額取引の多い個人投資家にとっては本当に天国のような環境にあります。

高配当系の投資信託の何が問題なのか

先に説明した窓販証券では、よく毎月・高配当の投資信託が推奨される傾向があります。

何故そのような事態が発生するのでしょうか。窓販証券の利益モデルで説明したように投資に対してあまり知識を持っていない、学ばない投資家から「手数料が得やすい」投資信託となっているからです。

ですから毎月・高配当の投資信託というのは私のようなインデックス投資家の皆様には「ほぼ必要のないもの」という認識になっています。

何故必要ないのか。

それは主に「高配当だからと言って利益が増えるわけではない」「課税の繰り延べ効果が得られない」「構造的に高コスト」「運用効率が下がる」といった理由があります。

高配当だからと言って利益が増えるわけではない

証券会社が株や投資信託を販売するにあたって一つの売り文句が「高配当・高分配金」という単語です。一見して魅力的に見えますが、実は高配当というのは自らの総資産に何の影響も与えません。

例えば1株100円の株があるとして、毎年3月末に株を保有していた人に5円支払っている企業があるとしましょう。

一見して毎年5円づつ貰えて、利回り5%のなかなか良い銘柄に見えるかもしれませんが、3月末の配当金がもらえる日と、その次の日できっちり5円分株価を下げてきます。なので、実は総合的な利益は配当金があろうが、なかろうが変わらないのです。ですから実は配当利回りの高い銘柄には何の優位性もありません。

同じことが投資信託でも言えます。投資信託でも毎月分配金を出しているものについて、一見して多くの利益を上げているように見えますが、分配金が出た分だけ基準価額を下げています。

また株式の配当金よりもタチが悪いのが、利益が上がっていない中でも多くの分配金を出すものがあるという事です。

利益を出さず、元本を削ってだしている分配金のことを「特別分配金」と言い、配当金の例と同じように、5円払ったら基準価額が5円下がってトータルで見たらトントン。

それどころか、基準価額が上がっていないにも関わらず分配金ばかり毎月払われるので、どんどん元本割れ、しまいには最初は1万円あった基準価額が4,000円、3,000円などと非常に安くなってしまいます。

そうなると、投資信託は「償還」と言って、運用を止めて、残った受託金を投資家に払い戻して運用を終えてしまいます。

ただ、これだけだと配当金が多かろうが少なかろうが、プラスマイナスでゼロになるのであれば、それほど問題ではないように感じます。それでは

毎月分配・高配当の投資信託の何が問題なのでしょうか。

課税の繰り延べ効果がない

投資を行う際には、実は税金のルールについて良く知っておき、多くの税金を払わないように工夫する必要があります。

実はこの手の高配当の投資信託は税制的に不利な構造になっているのです。

株や投資信託は、いくら含み益(買ったときの金額と、現在の価格との差、仮想的な利益)が出ていたとしても、売却して利益を確定させなければ税金は発生しません。ですから、理論上は資産が増えていても課税はされていないメリットが生まれます。これを「課税の繰り延べ効果」と言います。

しかし分配金は、発生した時点でその分の「利益は確定してしまう」ので税金が発生します。

先に述べた特別分配金については、投資した元本が戻ってきているだけで実質的に利益ではないため課税はされないのですが、相場が良い時などには利益から分配金が発生して課税されてしまいます。

株などの投資は基本的に福利効果でどんどん利益が拡大していきます。ですから長期投資が大切です。また、利益を確定させるまでは課税が発生しないので福利効果を最大限に発揮させられるのですが、利益に毎回課税されてしまっているとその福利効果が減ってしまいます。

だったら、最初から分配金を出さない投資信託の方が有利、ということになります。

構造的に高コスト

分配金が発生するという事は、そのたびに振込手数料や特別分配金の割合の計算など、事務コストが発生していることになります。そのため配当が少ない、あるいは無い投資信託と比べると全体的にコストが高くなる傾向になります。

投資信託は定額から細かく売却することが出来、普通預金のような感覚で出し入れが可能ですから、無用な毎月の分配金のために余計なコストを支払うことになっているのは非常にもったいない話です。

運用効率が下がる

これはあまり他のブログなどでは書かれていない問題点なのですが、投資信託の分配金を「再投資」ではなく「証券口座での受取」としている人が案外多いのです。この選択は利益を大きく毀損します。

何故なのか、それは多くの知識の無い投資家は、受け取った多くの分配金を証券口座にそのまま残してしまっているためです。

分配金が多い投資信託を保有していて、しかもその分配金を証券口座内で遊ばせてしまっているとどうなるか。資産を増やすために投資をしているつもりが、実際にはただ手数料をたくさん取られる投資信託を持っていて、しかもだんだん普通預金並みの金利しかつかない(あるいは金利のつかない)遊ばせたお金ばかりが積みあがることになってしまいます。

これは実例なのですが、私の祖母が保有していた毎月配当のソブリン債投資信託は、実際には半分近くが配当金による現金となってしまっていました。

相場は良い状況だったので、コストが高い投資信託とは言えずっと保有できていれば利益は出ていたのですが、知らず知らずのうちに現金比率が高くなってしまっていたために得られるはずの利益を逃すことになってしまいました。

これは証券会社にとっても都合良くできていて、現金比率が上がってきたところで「新しい商品」を勧めることにより、更に手数料を取ろう、という営業が可能になるのです。

簡単な見分け方

ということで、毎月配当・高分配金の投資信託の問題点を色々と列挙してきました。

このようにデメリットが多く、毎月配当・高分配金のものは避けるべきでしょう。

しかし、投資初心者の方はなかなか「ダメな商品」なのか、「いい商品」なのか一見して分からないと思います。

しかし、初心者でもすぐに分かる簡単な見分け方があります。

それは「つみたてNISA対象商品」であるかどうかです。つみたてNISAはこういった購入してはいけない投資信託を除外できるようにスクリーニングされていますから、前述のような質の悪い投資信託が入ってくる余地は少ないです。

ですから、まずはつみたてNISA対象のもののみを選んでおけば間違いはないでしょう。

…今回は記事がかなり長くなってしまったので、次回もう少し具体的な商品などを挙げて説明を行いたいと思います。